Q.さっそくですが、大久保先生の講座でのご担当は?
実技科目を担当しています。
Q.プライベートのことで恐縮ですがオフは何をしていますか?趣味、特技、好きなこととかあれば教えてください。
読書が趣味です。
日本語関係の本に限らず、
文学、ミステリー、エンターテイメント、古典、エッセイ、詩歌、児童文学、ノンフィクションなど
ジャンルを問わず常に4,5冊並行して読んでいます。
許されるなら一日中ひたすら読んでいたいです。
文中に、自分が使ったこともない言葉、表現、「ス…ステキ!」と感じる言い回し、絶妙な翻訳文などを見つけると、
とても嬉しく豊かな気持ちになります。また、まだまだ自分は日本語について知らないなと気づかされます。
Q. トップ写真に選んだ「わたしの1枚」についてお聞かせください。
10年程前に赴任した中米の国での1枚です。
雨季に思いきりザーッと降るのですが、
その後カラッと晴れる日は気づくと空に巨大な虹が。
日本で見たことがあったものと違い、くっきりとしたきれいな姿をしばらく見せてくれていたので
仕事終わりに疲れて歩いていても楽しい気持ちになりました。
もし日本語教師になっていなければ、
出不精の私は日本の裏側でこの大きな虹を見ることも、この国の方々に会えることもなかったと思います。
Q.そんな大久保先生の「これまで」について自伝的に熱く語ってください!
海外でも国内でも、自分の実力以上の力が必要な場で四苦八苦しながら全力でやってきました。
たくさん失敗や呻吟もし、学生や周りの先生方から気づきや学びを得て鍛えられてきたと思います。
思えば、学生よりも私の方が教えられた比率が多い気がします。自分の考え方も年月を経て変わりました。
学生たちと接する中で、何か悩んでもすぐ答えを求めず、
「その問題と気長に向き合っていけばいいや」と考えられるようになったことが自分にとっての大きな変化だと思います。
前述の「気づきや学び」ですが具体的に言うと、
問題や疑問にぶち当たったときに得られることが多いです。
以下、2つだけご紹介いたします。
◇「目の前の学生を第一に」
勝手に師匠と慕う先生から、海外で仕事とその周辺環境に悩んでいたときにメールでいただいた言葉です。
そうだ、悩み出せばきりがないけれど、自分が何をすればいいのかは目の前の学生を見ればはっきりしている。
行き詰まっていたところで
「彼らが日本語を使えるように、わかるように、自分ができることを最大限するのみ」
と気づけました。
その後も悩んだらこの言葉に立ち戻るようにしています。
◇「国のためではなく、あなたを待っている人のために行きなさい」
海外へ行く前に受けた講義での先生の言葉です。
私が派遣される国は、日系企業はもとより日本語を使う機会が全くない国だったので、
他の職種(インフラなど喫緊とされる職)と比べて、その国へ行っても自分は役に立てないのではないかと思い、
講義後に先生のところへ質問に行きました。
すると先生は、
「国のためではなく、あなたを待っている人のために行きなさい。<国と国>ではなく、<人と人>なんだよ」
と答えてくださいました。
「これまで」を思い出せば、そういうたくさんの教えが自分の柱になっています。
そのときはわからなくても、あるとき実感を伴い気づくこともあります。
これからも自分にないもの、知らないことを学び続けたいです。
そして、先達はあらまほしきことなり(すみません、どこかで一度使ってみたかった…)ですので、
私もいつかどなたかのそんな先達の一人になれればいいなと目指しつつやっていこうと思っています。
Q.日本語教育で興味のある分野とか専門とかってありますか?その魅力や面白さも教えてください。
常に考えていることは「どうやったらいい授業がつくれるか」ということです。
詳しく言うと、自分の担当する学習者を思い浮かべ、
彼らとどのように授業をつくっていくか、
彼らが理解(できれば楽しく)し使えるように自分はどんなことができるのか、
と考えることです。
「いい授業」かどうかは学習者が決めることですし、
終わりがなく、明確な答えも得られないので面白い反面苦しい作業でもあるのですが、
手ごたえを感じたときの嬉しさ、その場の盛り上がりを知ったら苦ではありません。
また、ここからは問われていることから外れてしまうかもしれませんが、
日本社会の変化について興味を持っています。
日本語教育の隆盛期には、外国の方々は「経済大国日本」の言語を習いたいと思っていたことでしょうが、
現状は、今後は、どうなっていくのかを自分なりに考えておきたいです。
そのために、そもそも日本語を使う「日本」とはどういう国なのかを知りたいと、
趣味を兼ねて、ベネディクト『菊と刀』、丸山真男『日本の思想』、矢口高雄『おらが村』などをまずは読んでいるところです。
面白いです。
Q.養成講座で印象に残っているエピソードとか、講座担当者として大事にしていることとか、教えてください
受講生の方が模擬授業後、反省点に向き合い課題を乗り越えられたり、
学期後半になると私がフィードバックしようとしたことに先にご自分で気づかれたりする場面などがとても嬉しく印象に残っています。
悩みながらも真摯に準備に取り組んでいらっしゃる姿から、「私もしっかりやらねば!」と刺激をいただいています。
頭ではわかってもすぐにできるようになることばかりではないですが、
まず気づいて意識し続けることにより、少しずつ自分の技になっていくはずです。
その自身の過程が、現場で学習者の気持ちを察するために役立つとも思うので、
講座では臆せずトライ&エラーできる場を作れたらと思っています。
Q.最後にこれから日本語教育を学んでいる方々、学ぼうとしている方々にメッセージをお願いします!
この仕事は様々なバックグラウンドを持つ方が多く活躍していらっしゃいます。
今までの経験がなんでも役に立つ仕事だと思います。
「普通の人」から「日本語のプロ」になると、今までと視点が変わるかもしれません。
私たちを待ってくれている人を思い浮かべ、お互い技を磨いてまいりましょう!
お話、ありがとうございました!
カテゴリー: 講師・職員の横顔 | 2020.04.10