日本語教師の国家資格「登録日本語教員」がいよいよ2024年4月より新設!現行の制度からの変更も多く、気になる話題ですよね。特に!2024年より実施される「日本語教員試験」については現役教師にも受験が求められるケースもあり、「ちゃんと合格できるかな…」「今の日本語教育能力検定試験とはまた違うのかな…」と心配な先生もいらっしゃるのではないでしょうか?
このコラムでは現役の日本語教師の先生方や、登録日本語教員の資格取得を目指す方に向けて日本語教員試験について徹底解説します。登録日本語教員資格取得に向けての一歩目として、ご参考になさってください♪
※本文の内容は2023年12月10日に実施された「日本語教員試験」の試行試験に基づいて執筆しています。実際の「日本語教員試験」については出題内容や形式が変更されることがあります。
※以下の資料で試験内容や問題例、試験結果が公表されています。合わせてご覧ください。
『令和5年度日本語教員試験試行試験実施概要(案)』
『日本語教員試験試行試験 結果の概要』
✔日本語教師の国家資格「登録日本語教員」を取得したい人 ✔「日本語教員試験」を受験する予定の人 ✔現行の制度で日本語教師として働いている人 ✔日本語教師養成講座(文化庁届出受理)を受講中、または修了した人 |
・2023年12月10日に実施された【日本語教員試験】の試行試験の内容 ・これまでの日本語教育能力検定試験から、新設される日本語教員試験はどのように変わる? ・日本語教員試験の基礎試験、応用試験はどのような構成? ・日本語教員試験の基礎試験、応用試験の特徴と傾向は? ・日本語教員試験の基礎試験、応用試験の難易度は? ・日本語教員試験を受験するにあたって現職の先生はどのように対策すればよい? |
このセクションでは日本語教員試験の基礎試験をレビューします。
これまでの日本語教育能力検定試験(試験Ⅰ)からみて、新設される日本語教員試験の<基礎試験>はどのように変わるのでしょうか。
これまでの日本語教育能力検定試験の一部に見られた五択の問題はなくなり、全設問が4つの選択肢から選んでマークする形式になりました。
試行試験の段階では試験時間が以下のように変更されていました。
基礎試験は大問が18問あり、全て4つの選択肢から選ぶ設問から構成されています。「【 】の観点から他と性質が異なるものを選べ」という形式が大問1つ計10問程度、残りは全て「次の文章を読み、いくつかの問いに答えよ」という形式で統一されています。
基礎試験では領域ごとの出題割合が明記されています。
これは日本語教師に求められる能力に対応した傾斜と考えられますが、区分4と区分5が合わせて7割と高いです。ただ、試行試験受験の際はそれほど大きな偏りは感じませんでした。学習の際もあまり意識しなくてもよいかもしれませんね。
これまでの日本語教育能力検定試験(試験Ⅰ)に比べると、易化していると言えます。重箱の隅をつくような設問がほぼなく、とにかく問題の出し方が素直です。キーとなる用語さえ理解していれば、ひねらずそのまま解けるでしょう。日本語教育能力検定試験で見られたような、個人の読解力、分析力、推測力等で差がつく設問は少なく、勉強量が結果に比例する、名称の通り「基礎」を問う試験です。
基礎試験は比較的対策しやすい試験と言えます。
市販の日本語教育関連の用語集に掲載されている用語を、一通り空でざっくり説明できるくらいまでおさえましょう。理解の「深さ」はさほど必要ありません。全く勉強していない人でも、用語集を持ちこめば解けるくらいのイメージです。これさえしっかりやれば、点数の6~7割の獲得が見込めるのではないでしょうか。
あとは日本語教育の関連資料をおさえておくといいでしょう。なかでも、これからの日本語教育のフレームワークとなる「日本語教育の参照枠」は必読!試行試験では参照枠の内容を直接問うものもありましたし、その理念や考え方を基底にした設問が全試験にわたって何度か見られました。
また、「入国管理法の改正」「日本語教育推進法」「日本語学習者数統計」などの資料についても、ポイントをおさえておきましょう。
さて基礎試験について、「素直!」「基本的な用語しか出ない!」と言ってきましたが、大規模試験というのは得てして回を重ねるごとに、よりマニアックに、より変化球になっていくことがあります。しっかり勉強すれば、結果が伴う試験なので、受験が必要な方は早めに受けておくことをお勧めします♪
このセクションでは日本語教員試験の応用試験1(聴解)をレビューします。
これまでの日本語教育能力検定試験(試験Ⅱ)からみて、新設される日本語教員試験の<応用試験1>はどのように変わるのでしょうか。
単純な比較はできませんが、試行試験の段階では試験時間と問題数が以下のように変更されていました。
日本語教育能力検定試験では高低アクセントの階段や口腔断面図から選ぶ発音問題の大問がありましたが、日本語教員試験では複数ある設問のバリエーションの一つに格下げ?となりました。
応用試験1(聴解)の試験時間は45分で大問が3つあり、全50問でした。音声を聴いて、設問に従い4つの選択肢から答えを選びます。音声は一度しか流れません。発音に関わる大問1、2、3が一掃されましたが、目新しい問題形式はなく、これまでの検定試験を踏襲しています。
大問1(20問)
…学習者の発話を聴いて問題点を指摘する問題
*これまでの日本語教育能力検定試験の大問6をベースに、大問1、2、3の問題を少し混ぜたもの。
大問2(20問)
…日本語母語話者と非母語話者のやりとりを聴いて設問(やりとり1つにつき2問)に答える問題。
*これまでの日本語教育能力検定試験の大問4をベースにしたもの。
大問3
…日本語の聴解素材について問題文を見ながらその音声を聴いて設問に答える問題
*これまでの日本語教育能力検定試験の大問5をベースにしたもの。ただし、すべての問題に視覚素材の掲載あり。
日本語教員試験の中の最難関であり、一言で言えば…しんどい。一問1分未満の解答ペース、一度しか流れない音声、「発音」「文法」「語用」と出題パターンが毎問切り替わる、1つの音声で複数の設問を解く問題がある、などシビアな条件がてんこもりで、45分間ずっと頭をフル回転させることになります。知識と同じくらい集中力、瞬発力、短期記憶、情報処理能力が求められる試験と言えるでしょう。
ただ、全設問が教育現場に結びついたものであることは、現役教師にとってアドバンテージになるかもしれません。特に大問3「日本語の聴解教材」に関する問題は、試験作成のスキーマがあれば、かなり推測が働くので、比較的易しく感じるはずです。
試行試験では「笑っちゃうくらい解けなかった」というインパクトを多くの方に残したであろう応用試験1(聴解)ですが、その一方、対策や慣れが物を言う試験です。
日本語教育能力検定試験に比べて出題のバリエーションは増しましたが、無限にあるわけではありません。過去問を通して複数のパターンを知り、「はじめて見た」→「あー、この問題ね」を増やしていきましょう。また問題文に使用される用語も領域ごとにパターンが決まっています。例えば発音なら「高低アクセント」「文末イントネーション」など、解答の前提となる頻出用語をおさえておきましょう。
小手先ですが、受験テクニック的なものを身につけておくのもよいです。例えば、ペースの速さに対応するため、少しでも時間を見つけて次の問題や選択肢を読んでおくこと。5問ごとに「すこし休んでください」とやさし~い音声が流れるんですが、その間、設問や選択肢を読みながら次に備えます。
そして何より受験への「慣れ」です。集中力を45分間持続させる訓練として、模擬試験や過去問を数回通してやっておくとよいでしょう。
初見では難しく思える反面、対策や準備によって要領もつかみやすそうな応用試験1(聴解)。「音声試験を制する者は応用試験を制す」、しっかり準備して臨みましょう。
このセクションでは日本語教員試験の応用試験2をレビューします。
これまでの日本語教育能力検定試験(試験Ⅲ)からみて、新設される日本語教員能力試験の応用試験2はどのように変わるのでしょうか。
単純な比較はできませんが、試行試験の段階では問題数が以下のように変更されていました。
日本語教育能力検定試験で出題された記述問題は実施されなくなりました。
大問が12問あり、1問につき設問は5問程度、全60問でした。全問長い文章やケースなどを読んで4つの選択肢から選ぶ問題です。
現役教師であれば、試験勉強をしなくても「おそらくこれかな…?」という感じで解けるものが体感で7割ほどありました。というのも、「学習者対応に関する教師間の話し合い」「実習生と指導教員の相談」など教育現場の事例が多く、専門用語も基礎試験ほど出てこないからです。
ただし、「バックワードデザイン」「スキーマの活性化」「行動中心主義」「談話」「トップダウン処理」のような教育的アプローチを基盤にした出題がしばしばみられることから普段の教育活動におけるこれらの志向性によって、教師の間にも解答の精度に差が生まれそうです。
設問の中から、まずは教師生活の中で身近に感じる類題に取り組み、知らない用語をその都度調べていきましょう。「普段教育活動でやっていることは、こんな用語や理論で説明できるんだな」と気づきを得ながら学ぶと効果的です。
あとは基礎試験と同様、日本語教育の関連資料もキャッチアップしておきましょう。まずは「日本語教育の参照枠」です!試験に見られる教育活動の基盤となる考え方も、そこで整理することができます。
応用試験2は、現役の先生であればパッと見「何とかなりそう」と感じる試験なのではないでしょうか。その中でも知らなかったことや意識していなかったことについて、「学び直し」という感覚で対策ができる試験であると感じました。
※本文の内容は2023年12月10日に実施された「日本語教員試験」の試行試験に基づいて執筆しています。実際の「日本語教員試験」については出題内容や形式が変更されることがあります。
カテゴリー: 日本語教員試験(試行試験) 日本語教師の国家資格 | 2024.02.03